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国内の建設業界ルールLCAに準拠したGORLEM CO2の導入によりCO2排出量の算出時間を3/4削減。SHIMZ VISION 2030に向けた清水建設の挑戦

1804(文化元)年の創業以降、建設事業を中核とし多岐に渡る事業を展開してきた清水建設。近年では、再生可能エネルギー、不動産開発事業、研究開発投資、イノベーション推進にむけた人財教育や新規事業開発の取り組みなどにも力を入れています。

 

清水建設が掲げるSHIMZ VISION 2030には「地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現」のための、再生可能エネルギーの普及、省エネ・創エネ、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進、事業活動におけるCO2排出量削減などが注力視されています。一方で煩雑な建物のCO2排出量計算をおこなうことは建設業界の課題となっています。清水建設がGORLEM CO2の導入に至った経緯と現在の活用状況についてお話を伺いました。

導入前の課題

原単位で適切にCO2の排出量を算出するための方法論を模索

Novare Venture Business Unit Group Acceleration Group Conductor 加藤 大輔氏

清水建設のNOVARE Venture Business Unitではイノベーションを牽引する取り組みやスタートアップとの連携、投資をおこなう部署です。このNOVARE Venture Business UnitのGroup Conductor 加藤氏は事業に関わる莫大な情報をどのように整理して、CO2排出量の計算を適切に算出するのかについて、調査を進めていました。「カーボンプラットフォームをどのような形で当社側に備えるかという点において課題を感じていました。」と加藤氏は話します。

 

特にCO2排出量を算出するにあたり、サプライチェーンのCO2排出量算定方式に必要な単位として原単位があります。この原単位を適切な形で定めることができるスタートアップ企業と連携して進めることを模索していましたが、良いアイディアが出ておらず課題を抱えていました。

GORLEM CO2を選んだ理由

ゴーレムが採用しているLCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方に共感

そんな中、ゴーレムとの出会いで転機が訪れます。「2022年2月に開催された環境エネルギーイノベーションコミュニティの懇親会で、偶然、起業間もない野村代表とお会いし、”建築に特化したカーボン算出プラットフォームの構築”を目指されると伺ったことがきっかけです。」と加藤氏は語ります。

 

当時、さまざまなベンチャー企業がカーボン算出プラットフォームのサービス提供を開始している中、特に目を引いたのはGORLEM CO2の根幹にあるLCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方でした。「上流から下流までのサプライチェーンにおける連結排出量でCO2等を算出するScope3という方法を検討していましたが、Scope3とは全く違うLCAという考え方に共感しました。」と加藤氏は言います。

 

このLCAは日本建築学会が公開している建物のLCA指針に準拠しています。建設業界において、資源の採取から材料調達・運搬・建設・改修・除却等までの生涯に渡っての活動が環境にどれだけの影響を与え得るものであるかを「適切」かつ「定量的」に評価するための指標としてゴーレムが採用しているLCAを調べて検討した結果、ゴーレム社のGORLEM CO2を採用するという結論に至りました。

 

「学術的に証明されたライフサイクルのCO2産出量に基づいて理論値を出すという方法が精緻で、市場に受け入れられるだろうと考え、ゴーレムさんと一緒にやっていくことを決定しました。」と当時を加藤氏は振り返ります。

部門横断チームを組成しGORLEM CO2をベースとしたCO2排出量算出プラットフォームを開発

2022年6月GORLEM CO2を利用するにあたり、清水建設の見積システムと連携し原単位で算出するためのシステム開発に向け積算見積部と設計部での部門横断チームを組成しました。GORLEM CO2と見積システムを連携し、建設生産過程で生じるCO2排出量を精算見積データから自動算出できるCO2排出量算出プラットフォームの共同開発を進めました。その後、2023年3月にプレスリリースにて「建設生産に伴うCO2排出量の自動算出プラットフォームを開発」を正式発表しています。

導入後の効果

全社窓口で申請を受付けCO2排出量の自動算出プラットフォームを活用

2023年3月頃から本格的にGORLEM CO2をベースとした同プラットフォームの利用が始まり、現在では全社の窓口でワークフロー申請をすることで利用できるという。特に清水建設が事業を進めるにたり、関わる不動産デベロッパーやデータセンター事業者、倉庫事業者など主にCO 2削減に意欲が高いお客様からのニーズが多いという。

1ヶ月かかっていたCO2算出作業が精緻な情報を1週間で提供可能に

GORLEM CO2の導入の効果は絶大な効果がありました。導入前に「CO2産出量の算出資料を見積部に作成してもらったところ、1人の担当者が1ヶ月苦労して資料をまとめ上げました。これらの作業を全案件作業していたら、関係者が疲弊してしまうということを社内でも理解してもらいました。」加藤氏は当時の状況について語ります。見積資料をベースとしたCO2算出作業がどのくらい大変なものかをいうことを定量的に示した上で、GORLEM CO2の重要性というのを訴えたという。

環境エネルギー・BLC推進部 谷津 博邦氏

現在、現場では「簡単な算出だけであれば、建築の専門家ではない事務系のスタッフが30分で出すことが可能です。社内のチェックなども含めると1週間程度で対応可能になりました。」と環境エネルギー・BLC推進部の谷津博邦氏は語ります。GORLEM CO2を活用することにより、1ヶ月の作業が1週間程度の作業時間になり、3/4を削減することに成功しています。

今後について

世界の産業別CO2排出量の割合で建築物や建設業によるCO2排出量は約40%を占めており、産業の中でも大きな割合を占めています。建築物のライフサイクルCO2排出量のうち、運用以外の資材製造から建設、改修、廃棄の範囲はEmbodied Carbonと呼ばれ、今後大幅なCO2削減を達成するためにEmbodied Carbonの削減を進めることが重要になってくると考えられています。

 

「Embodied Carbonを減らすにはいろんな設計やノウハウもあるけれども、新しい技術を持つスタートアップ企業と連携することで、新しい技術を取り入れ活用することも見据えています。そのためにさまざまな取り組みをおこなう過程でCO2排出量がどの程度あり、新たな取り組みでどこまで削減できるかという可視化が重要です。」と加藤氏は語ります。

土木技術本部プロジェクト技術部 永尾 謙太郎氏

GORLEM CO2の活用が進むことで、次のさまざまなビジョンが見えてきています。「私の土木は建築と違い、基本的には作るときのCO2が全てなんです。それをまずはゼロにしたいです。それに加えて、カーボンクレジットを創出するという事業は、土木の役割は大きいと考えます。CO2を吸収する側の技術を発展させることで更なる展開も考えています。」と土木技術本部プロジェクト技術部の永尾謙太郎氏は語ります。

 

建設業界のサステナブル分野において、さまざまな挑戦を続ける清水建設。2050年度には、CO2排出量をゼロとする目標を掲げています。彼らの挑戦に今後も注目していきたい。

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